就労移行支援、ハローワーク、職業訓練校は、いずれも就労支援を目的としていますが、それぞれのサービス内容や支援方法には大きな違いがあります。本記事では、それぞれのサービスの違いを徹底的に解説します。
就労移行支援とは
就労移行支援とは、障がい者や心身の不調を抱える人が一般企業での就労を目指すために提供される支援サービスです。
対象者には精神障害者、発達障害者、身体障害者などが含まれます。具体的な支援内容としては、職業訓練、就職活動のサポート、職場定着の支援などがあります。就労移行支援で行われるカリキュラムは、利用者が一般企業での就労を目指すために必要なスキルや知識を身につけるためのプログラムが含まれています。
就労移行支援で主に行われるカリキュラム
就労移行支援のメリットとデメリット
メリット:今後安定して働く上で自身の障害とうまく付き合う力を身につけられる
自身の障害に合わせた専門的な支援が受けられ、今後安定して働く上で自身の障害とうまく付き合う力を身につけられるというメリットがあります。
入所の際には、事前に現在の症状や目指す目標、希望職種といった内容についてカウンセリングシートというものを作成する場所がほとんどです。支援員は個々の利用者の特性などに配慮した支援を行い、利用者自身が自身の障害と向き合い、うまく付き合っていく力を身につける手助けをしてくれます。最終目標として、一般企業で就労するうえで自身の障害を上手にコントロールし、長く安定して働いていける力を養います。
デメリット:一般的な技能訓練に留まる場合がほとんど
一方で、技能訓練においては高度で専門的な技能やスキルを身に着けるといったことを目標としていない場合がほとんどです。
なかには、就労移行ITスクールのようなITに特化した就労移行支援事業所も存在しますが、様々な障害を抱えた利用者を幅広く支援する特性を持った就労移行支援事業所に、特定の高度な技能やスキルを持った支援員がいることはあまりありません。
ハローワークとは
ハローワークは、国が運営する公共職業安定所で、求職者と求人企業をつなぐ役割を果たします。正式名称は「公共職業安定所」であり、全国に多数の拠点があります。サービス内容には、求人情報の提供、職業相談、職業紹介、職業訓練の案内などがあります。
- 求人情報の提供
ハローワークは、多くの企業から提供された求人情報をデータベースに登録し、求職者に提供しています。これにより、求職者はさまざまな業種や職種の求人情報を一度に確認できます。
- 職業相談
職業相談員が求職者の相談に応じ、キャリアアドバイスを提供します。職業選択のアドバイス、応募書類の作成支援、面接対策など、多岐にわたるサポートが受けられます。
- 職業紹介
求職者が希望する職種や条件に合った求人を紹介し、応募のサポートを行います。企業とのマッチングを図り、就職活動を円滑に進めるための橋渡しを行います。
- 職業訓練の案内
ハローワークでは、求職者がスキルを向上させるための職業訓練プログラムを案内しています。これには、技能習得や資格取得を目的とした訓練コースが含まれ、求職者の就職可能性を高めるための支援が提供されます。
- 障がい者専門の相談員
ハローワークには、障がい者の就職支援に特化した専門の相談員が配置されています。これらの相談員は、障がいの種類や程度に応じたきめ細やかな支援を提供します。相談員は、個々の求職者の能力や希望に合わせた就職先を見つける手助けをします。
ハローワークのメリットとデメリット
メリット:広範な求人情報が得られる
ハローワークは、多くの企業と連携しており、幅広い求人情報を提供しています。特に地元企業の求人情報が豊富で、地域密着型の就職活動が行えます。ハローワークには、障がい者専用の求人情報が提供されています。これらの求人は、障がい者が働きやすい環境を提供する企業からのものです。
デメリット:長期的な職場定着支援の限界
ハローワークは就職後のサポートも提供していますが、長期的な職場定着支援には限界があります。特に、職場での問題が複雑な場合や継続的な支援が必要な場合には、ハローワークだけでは十分な支援が提供できないことがあります。
これを企業側から見ると、入社後の定着率にかかわる問題に発展します。就労移行支援を利用し定着支援サービスを活用できる求職者に比べ、ハローワークだけが支援を得られる機関である場合、入社後に発生する困難や障害に大して求職者本人自らが解決しなければならない比重が高く、企業側としては支援体制のしっかりした求職者を選ぶ傾向にあります。
職業訓練校とは
職業訓練校は、技術や技能の習得を目的とした教育機関で、実務的なスキルを学ぶ場です。プログラム内容には、専門職に必要なスキルや知識の習得、実習やインターンシップの提供などがあります。雇用保険を受給できない方でも求職者支援制度があり、原則無料で受講することができます。また、一定要件を満たせば、訓練期間中月10万円の「職業訓練受講給付金」が支給されます。
職業訓練校のメリットとデメリット
メリット:給付金を受けながら実践的なスキルが身につく
受講する地域によって開講しているコースは異なりますが、職業訓練校では医療事務、介護、IT系、事務、工業系、ビル・設備などのコースが用意されており、実践的なスキルを身につけたり資格取得を目指せます。本来なら受講費用がかかるところ、原則無料で受講でき、かつ、給付金を受けることができることは大きなメリットです。
デメリット:訓練期間が長い場合があるため、収入の不安がある
失業手当や職業訓練受講給付金といった支援制度はあるものの、従来働いて得ていた収入と同等の額を確保することはまず難しいです。職業訓練の受講中のアルバイトは一定条件下で認められてはいるものの、週20時間未満である必要があります。また、受講スケジュールがタイトであるため、そもそもアルバイトをする余裕がないなど、訓練期間が長くなればなるほど収入面での不安が高まるかもしれません。
比較と選び方のポイント
就労移行支援とハローワークの違い
就労移行支援は個別対応が主で、ハローワークは公共サービスとして幅広い求職者に対応しています。ハローワークでも障がい者の就職支援に特化した専門の相談員が存在し個別面談を通して支援をしてくれますが、具体的な職業訓練があるわけではないので障害特性の理解が十分でない可能性があります。
一方で、就労移行支援を利用した場合では、障がい特性に応じた個別プログラムが提供されるため、より具体的で実践的な支援が受けられます。就労移行支援では、職場体験やトレーニングを通じて、実際の仕事環境に慣れることができ、就職後の定着率向上にもつながります。また、就労移行支援施設では、障がいに関する専門知識を持ったスタッフが常駐しているため、求職者一人ひとりの状況に合わせたサポートが可能です。
ハローワークのサービスは広範であり、求人情報の提供や職業紹介に強みがありますが、より専門的で継続的なサポートを求める場合は、就労移行支援の利用が適しています。どちらのサービスもそれぞれに強みがあるため、自分のニーズに合わせて選択し、併用することでより効果的な就職活動が行えます。
就労移行支援と職業訓練校の違い
就労移行支援は就労に向けた支援がメインで、職業訓練校は専門的なスキル習得がメインです。
障がい者雇用を目指すうえでは就労移行支援は職場体験や就職後のフォローも行うため就職・就業において大きな利点となりますが、専門的スキルの習得は望めないためスキル研鑽の面では自主訓練としての取り組みが必要となります。
自主的にスキルの習得ができる場合で精神疾患や発達障害によって就業に困っているケースや、障がい者雇用で事務職や販売職などを目指すケースでは就労移行支援の利用が効果的です。これにより、より実践的な環境でのトレーニング経験を積むことができ、障がいに応じた適切なサポートを受けながら働く準備が整います。
一方、職業訓練校は特定の技術や知識を深く学ぶための場所であり、例えばITスキルや機械操作など、特定の職業に直結するスキルを習得したい場合に適しています。職業訓練校で得た専門スキルを持つことで、就職の幅が広がり、高度な職業にも挑戦しやすくなります。最終的には、自分のキャリアゴールや現在の状況に応じて、就労移行支援と職業訓練校のどちらが適しているかを判断し、効果的に利用することが重要です。
利用者のニーズや目標に応じた選び方
自分の就労目的に合わせて選ぶことが重要です。例えば、専門的なサポートが必要なら就労移行支援、幅広い求人情報を得たいならハローワーク、特定のスキルを習得したいなら職業訓練校が適しています。これらのどれか一つを利用すると決めるのではなく、併用したり、また順番に利用するなど柔軟に対応することが求められます。
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まとめ
就労移行支援とハローワーク、職業訓練校は、それぞれ異なる強みを持つ就労支援サービスです。就労移行支援は個別対応と職場定着支援に優れ、ハローワークは幅広い求人情報の提供と公共サービスとしての信頼性が強みです。職業訓練校は専門的スキル習得に特化しています。利用者のニーズや目標に応じて、これらのサービスを選択し、組み合わせて活用することが効果的です。